ザ・蔵造り ここがチェックポイントだ!

蔵造り資料館(旧万文)正面図
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●店蔵

川越の蔵造りの特徴は、倉庫としての蔵でなく、店舗を蔵造りとした「店蔵」であるといえます。通りに面した商家の顔である店舗を蔵造りにすることで、周辺からの類焼を防ぎ、裏につづく土蔵とあわせて敷地内への飛び火を防いだと考えられます。また、蔵造りの本来の目的である防火のほか、装飾的な要素も兼ね備えた工夫が随所にちりばめられており、見る者を飽きさせない魅力があります。

●箱棟

蔵造り建物の印象に圧倒的な重量感を与えているのが厚い土壁と豪壮な屋根瓦です。とくに屋根は最上部に壁のような箱棟がそそり立っており、一層の迫力を醸し出しています。箱棟は木製の箱状の芯に、漆喰などを塗り重ねて作られており、屋根を最上部で支える棟木の保護のためにあります。川越の蔵造りの箱棟は本来の機能のほか、箱棟そのものの装飾性が高くなっており、過剰なほど巨大な箱棟が並んでいる様は壮観です。

 

●鬼瓦

鬼瓦箱棟の両端には鬼瓦が配されています。鬼瓦は奈良時代頃から発達し、寺院建築を中心に普及しました。室町時代以降は、激しい形相こそ強い力の表れと考えられ、角は徐々に大きくなり、鼻・口も大きく両側に開き、その表情は激しさを増していきました。江戸時代以降、民家建築に採用されるようになると、鬼面だけでなく、それぞれの家紋や防火のためのまじないとして「水」の字、富を願う「福槌」を入れるなど、さまざまな意匠が取り入れられました。

●カゲ盛

箱棟両端の鬼瓦の後ろに、大きな高まりを見ることができますが、この部分をカゲ盛といいます。巨大化した箱棟の両端に鬼瓦を設置すると、鬼瓦も巨大なものが必要になりますが、その整合を図るためにカゲ盛を配して、箱棟と鬼瓦の接合部にボリュームとバランスを与えています。一見すると鬼瓦の一部にも見えますが、木製の骨組みに漆喰や瓦を塗りこめ、鏝(こて)による細工で仕上げられており、その大きさに比して重量がかからない構造になっています。

 

●観音開扉

多くの蔵造り建物の窓は重厚な観音開扉になっており、蔵造りの外観で最も目を引くところの一つです。扉本体と建物側の枠は階段状に細工が施され、閉じたときの密閉性を確保しています。この部分にも左官職人の鏝さばきが表れており、乾燥すると収縮する土や漆喰をくるいなく合せる高い技術が見て取れます。

 

●目塗台(めぬりだい)

観音開扉の下、1階の屋根の上に横たわっている細長い箱状の台が見えるでしょうか。これは目塗台で、火災発生時に観音扉を閉めたあと、扉の目地に土などを塗りこめるために設けられています。目塗台は非常用の施設でありながら、白漆喰や銅板葺きといった装飾的な意匠のものも見られ、蔵造り建物の外観にアクセントをつけています。

●レンガ積について

当資料館内では随所にレンガ積を見ることができます。例えば南側の敷地境のレンガ塀、住居棟と一番蔵の間、二番蔵と三番蔵の間というように、建物と不可分に使用されています。また、レンガの積み方もフランス積とイギリス積の2種類があり、当時流行した代表的な積み方が採用されています。当館の場合、レンガ塀はフランス積、建物の間はイギリス積が採用されています。防火建築として東京では明治の早い時期から採用されたレンガ積ですが、川越では伝統的な蔵造りが採用されたため、その補助的な防火施設にレンガが使用されています。このようなレンガ積は市内の各所に見られ、町並み散策の際にはレンガ積を探してみるのも楽しいですよ。

フランス積
フランス積
  イギリス積
イギリス積

 

●腰巻

建物の1階の下半分にあたる部分をさします。この部分は塗壁でなく、土を水平に薄く積み上げた「タタキ」になっており、耐水性・耐火性がさらに高くなっています。これは地面からの水分の壁土内への浸入を防ぐとともに、火災によって隣接する建物が倒壊した際に、下方からの類焼を防ぐために作られています。また、蔵造り建物は普通の木造建築に比べ、かなり重くなっています。したがって地面との設置面積を増やし、基礎を安定させることで、建物の耐震性を高めています。もちろん外観上も安定感を与え、蔵造り建物の重厚さの一因にもなっています。当館の店蔵の腰巻は「人造石洗出し仕上げ」といって、モルタルに砂や小砂利を混ぜたものを塗り、これに水をかけながらこすりだすことで、あたかも石のような風合いを作り出しています。他の例としては、御影石や大谷石、花崗岩などを用いている建物もあり、蔵造り建物が伝統的な技法でつくられながら、新しい資材を積極的に採り入れていたことを物語っています。

●ツブ・折釘

蔵造りの建物の壁面には漆喰を半球形に盛り上げた部分に、鉤形に折れた太い釘が突き出たものを見ることができます。この太い釘が折釘で、漆喰の盛り上がりがツブです。ツブを伴う折釘は補修作業の際のハシゴの固定など、縄をかけるために使われます。これは折釘に荷重をかけた際に、壁とは別にツブをつけておくことでツブの損傷だけで本体の壁土に亀裂が入るのを防ぐようになっています。また、折釘は鉄製なので、錆びると湿気を呼び込むため、釘が露出する部分を減らし、錆による湿気を壁土内に入れないようになっています。ツブの伴わない折釘は庇や霧除、下見板など、建物本体に後からつけた付属設備を取り付けるためのもので、いずれも蔵造り建物の壁面は釘などが打てないため、あらかじめ壁の芯に折釘を打ち付けてから壁を仕上げます。

ツブ
ツブ
  折釘
折釘

 

●袖壁

一般には「ウダツ」と呼ばれていますが、「ウダツ」は本来、梁の上にあって棟を支える束柱をさしたものであり、近世以降は建物の妻面に全体に配されて独立した屋根をもつものを「本ウダツ」と呼んでいます。また、本ウダツが2階屋根上に突出するのに対し、2階の屋根まで届かない高さで妻面を覆うものを「袖ウダツ」と呼ぶことがあります。市内にはこれらに該当するものはありません。では、蔵造り建物の「ウダツ」状のものは何と呼びましょう。市内にあるこれらのものは、ほとんど2階部分から突出し、1階の屋根上に配されているので、とりあえず「袖壁」としておきましょう。袖壁は近世の塗屋造においては防火効果があったようですが、蔵造り建物は建物全体が防火建築であるため、防火効果という点ではむしろ不要なものです。川越の場合、全ての蔵造り建物に設置されているものでないため、建物ごとの立地や風向きなどを考慮して作られたと考えられます。

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