黒漆喰、重厚な観音開きの扉、墨色をした瓦屋根、大きな鬼瓦。そして、堂々として何か自信に満ちているような風格が漂っています。この建物は、蔵造り(くらづくり)として多くの人に親しまれています。江戸時代に建てられたものもあり、昔と同じように人が住んでいる建物もあり、何軒も繋がって建っているところもあります。一番街商店街を中心に蔵造りは点在しています。
簡単に歴史のおさらいをすれば、明治26年におよそ町の4割を焼失したという川越大火があって、焼け野原に残っていたのが、数軒の蔵造りだったといいます。川越商人は、江戸の町を見習い、火事に強い蔵造りをこぞって建てはじめます。蔵造りを建てるには、相当の費用がかかりましたが、江戸時代寛永年間から江戸と川越は新河岸川の舟運(しゅううん)で結ばれ、米・織物等の商品流通や人の往来が活発となり、物資の供給地として栄えていた川越だからこそ、多くの蔵造りを建てることができたようです。一番多いときには100軒以上も集まっていたといいますから、当時の繁栄ぶりが伺えます。大正初期の写真では、一番街一帯(旧南町付近)ほとんどが蔵造りになっています。
この町の人たちは蔵造りを大切にしています。そして、町を良くしようと一生懸命がんばっている方が多く、古くていい雰囲気を持っている町一帯をさまざまな角度で生かしていこうと一丸になっています。平成11年10月には、一番街を中心とする町並みが「グッドデザイン賞」を受賞。そして、蔵造りの町並みの一帯は、平成11年12月1日の市政77周年を記念する日に、埼玉県ではじめての「重要伝統的建造物群保存地区」として選定されました。
蔵造りは、外観も様々でおもしろいのですが、建物の中に入ってあたりを見回すと、いろいろな発見があります。蔵造りの店舗では、内部についても蔵造りの特徴を最大限生かして店造りを行っていますので、上下左右と見回してみてください。一番街にある「川越市蔵造り資料館」も格好の探検ポイントです。建物に実際に入って蔵造りを体感でき、奥の蔵では関連の資料展示もあります。
蔵造りは、この町の人たちが大切にしている限り、いつまでもこの地に残っていくと思います。これからも私たちを楽しませてくれる蔵造りであってほしいと願います。ぜひ川越の蔵造りを見に来てください。
次回は、川越のシンボル・時の鐘を探検する予定です!
|